たちばな

彼女がその名を知らない鳥たちのたちばなのレビュー・感想・評価

4.3
救いのない雰囲気ものの映画かなと思っていたけど意外とちゃんと展開があった。
ラストは邦画らしいベタな演出にズルいなーって思いながらも、まぁでも泣いちゃうよねって感じで。

観ながらというか観終わってまず思ったのは、
汚さの中に綺麗な部分があるんだよなーってこと。

世の中なんて汚いことだらけだし、
いちいち腹立つこともぶつかることもせず生きてくしかないんだけど、
でも不満とか気分の悪さとかなんとなく胸に抱えながらみんな生きてるんじゃないか。

そういう胸糞悪さがこの映画にはあって、
だから非日常でもないし出てくる登場人物も別に極悪人でもない。
所謂普通の人で、みんながちょっと抱えてる狡さとか残酷さとか、そういう目を逸らしたくなるような嫌な部分ををデフォルメしたようなキャラばっかり。
キャラというかあえてそういう見せ方してるせいで嫌悪感も湧く湧く。

でも日常だって、
そういう中にまっすぐで綺麗な部分があるもんだよなって思った。
上手く言えないけど、、。
汚いことをしてるからって、心が汚れてる訳じゃないって思うし、、。
人間って複雑で、
いつも正しいことだけを選べる訳じゃないから、
そういう上手く生きられない人達の話、
とにかくその辺にいる奴らの話。

これをラブストーリーと言っていいのかわからないけど、
色んな愛の形があると思った。
一つじゃない。
羨ましいような、憧れるような愛では絶対にないけれど
ぐちゃぐちゃの愛、
でも愛は愛だし、
どんな愛でも愛は愛、尊いよ...って感想。

キャスト陣がとにかくよかった、非の打ち所がない。
蒼井優ちゃんはいつでも裏切らないし、阿部サダヲはやっぱりすごいって再認識。
松坂桃李くんがこんな役やるんだっていうのが、好感度上がったし、ハマり役。
竹野内豊の悪い役初めて見て新鮮だった。
全員絶妙なバランスで映画を引き立てていて、
誰かがひとり違ったら全然違う作品になるんじゃないかってくらい。
これはこの人達でまさにって感じの。

登場人物たち全然好きになれないのにそれぞれ共感できる部分があってすごい。
それって結局人間らしさっていうか、人間臭さっていうか、
自分とか他人とか自分の人生とかを上手くコントロールできてなかったり、そういうとこなんだろうな。
同族嫌悪だよ。