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彼女がその名を知らない鳥たちのminamiのレビュー・感想・評価

4.4
今年一番楽しみにしていた邦画。

原作は未読ですが、あらすじとキャスティングを知った時点ですでに興奮気味。
最近本当にすごい俳優さんだと改めて大注目している阿部サダヲさんと蒼井優さんが主演というだけで間違いない感じですが、
何よりもどストライクなのはタイトルのセンスでした。
絶対自分が好きなタイプの作品だと直感で分かりました。

陣治と十和子が住んでいるマンションの部屋の生活感と汚さがリアルすぎて、そのおかげで世界観にすっと入れた気がします。
失くしたピアスを探す時の箱ひとつとっても、あんな雑な所(だけど彼女にとってはきっと宝箱的な箱だと思う)に大切なピアスを入れておく可能性がある十和子の性格とかをよく表していて、監督の演出はじめ小道具や美術さんの素晴らしさも感じました。

クズ男やダメ女というよりは、あきれるほどに人間くさい人間達ばかり登場する。
映画の告知通り、不快感さえ感じさせ嫌~な気持ちにさせるような彼らの日常から描き始め、後半どんどん不穏でミステリー要素が濃くなって引き込まれる。

性的なシーンも満載で、しかも十和子対、相手の男性はシチュエーションごとに次々と変わる。
不快感を与えてもおかしくないはずなのに、劇場で観ていることや周りを忘れてしまうほど魅入ってしまうエロティックで美しいシーンばかり。
とくに陣治とのシーンは関係性をよく表していて胸が苦しくなった。

~以下ラストのネタバレあり。これから観る方は読まないでください~




この物語がどこへ向かっていくのか、全く想像がつかない結末ではなかったのに、ラストシーンではそれまでの出来事が映像とともに脳内でも走馬灯のようにフラッシュバックしていく。
あの時、あの時、あの時!…と、陣治の行動を思い起こして切なくなる。
あんなに邪険にしていた陣治の腕に抱かれたまま子供のように大人しくなっている十和子。

陣治が選んだ結末は究極の愛なのか、もう疲れてしまったのか、はたまた復讐心もあったのかもしれない…正解は分からないけれど、気味悪かった陣治のストーカー的な行動や愛し方が尊いものに感じられる。
そして十和子は陣治を失って、陣治からの愛と、陣治への愛を手に入れたのではないでしょうか。

この2人が愛おしすぎて涙が止まらない。

最後はちょっと美しすぎる気もしましたが、期待を全く裏切らない作品でした。
最近の映画は、予告で良いシーンを流しすぎだと思います。
この作品もかなりラストが分かるような予告の作り方になっていますが、それをもってしても引き込まれるような映像でした。

陣治が阿部サダヲで、十和子が蒼井優で良かった。
原作読んでみます。


2018.3.2追記
🏆第41回日本アカデミー賞🏆
蒼井優 さんがこの作品で最優秀主演女優賞を受賞されたのが本当に嬉しいです!
おめでとうございます✨


設定·主題★★★★
物語·脚本★★★★
映像·演出★★★★★
配役·演技★★★★★
音楽 ★★★
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