ジャッキーケン

バトル・オブ・ザ・セクシーズのジャッキーケンのレビュー・感想・評価

4.3
傑作!
テニスとフェミニズムとLGBT
現役チャンピオン「ビリージーン」と55歳の元王者「ボビーリッグス」の男女対決は世の中にフェミニズムを投げかける代理戦争にまで発展していく展開とスポ根要素が絡んだテニス映画。僕はこの映画でまず連想したスポーツ映画はソ連とアメリカの代理戦争映画「ロッキー4炎の友情」です。

ビリージーンとライバル関係にあるマーガレットコートがアポロでスティーブカレルがドラゴに見えてしまう男女対決1戦目のボロ負けっぷりに絶望、そこから炎のように燃え上がるビリージーンの猛特訓にはテニスと1戦によってこれからの女性社会の未来をいざなう希望と重圧。この重圧に負けてしまったマーガレットの仇をうつ復讐劇だ。

スティーブカレルはふざけてるように見えてテニス人生とギャンブル人生を諦めきれない人として描かれただの性差別主義者というわけでないところがいいし対立しつつも夫の挑発セリフにやれやれと呆れる奥さんも良かった。なによりスティーブカレルが出ている時点でコメディとしては一定の面白さがありました。
ボビーリッグスの後日談は彼の変わらない生き様に笑みが溢れましたね
エマストーンは本作では女優として新たな道を開拓していた。「ララランド」「アメスパ」シリーズにおいてはシンデレラ的な華やかなヒロインらしさがあるが本作は男勝りのテニスプレイヤーで70sファッションといつもより老けている顔も演技派らしさが見えている。
本作のMVPはアランカミング、彼もまた同性愛者であり「チョコレートドーナツ」同様に投げかけるメッセージに泣ける。試合後ビリージーンと抱擁を交わす場面は「いつか愛される日が来る」のセリフも相まって超グッときました。

肝心のテニスシーンは「アイトーニャ」のスケートシーン然り極力カットせずドラマチックな演出すらない試合中継を見ているようなリアルな攻防は説得力がありました。

LGBT以前に女性たちが生きづらい世の中を変えていくビリージーンを始めとする女性テニス選手の功績に感動しました。
テニス業界を男性だけのものではなく女性にも平等であるようにアランカミングのような衣装さんやスタイリストなど別の立場の人にもスポットライトが当たるように様々な人の支えもあったなんて考えると女性だけではなくトランスジェンダーの人たちも巻き込んだ世紀の代理戦争だったんだなとそのスケールの大きさに驚かされますね。