Jeffrey

処刑の部屋のJeffreyのレビュー・感想・評価

処刑の部屋(1956年製作の映画)
3.0
「処刑の部屋」

冒頭、島田克巳はU大学の四年生。 気難しい銀行員の父、発狂する母、大学野球リーグ戦、U大学が優勝、その夜。歓喜と熱狂のさなか、仲間らと知り合った女子学生のビールに睡眠薬を忍ばせた。今、俺たちのしたいことをやり通す若者が描かれる…本作は元東京都知事の石原慎太郎が原作で、一九五六年に市川崑が大映で監督した青春映画で、若尾文子目当てで当時は観たが、あまりの衝撃的な中身に驚いた。実際に、色々と事件が起こってしまったようで、劇場で少年たちが映画にインスパイアされて強姦目的の女性監禁事件などを起こしている。本作は市川崑の大映入社後の一作目であり、石原原作の小説を映画化した「太陽の季節」「狂った果実」とともに「太陽族映画」と呼ばれてる。主演の川口浩がハンサム過ぎる。彼を初めて知ったのも市川崑作品の「おとうと」でお姉さん役の岸恵子ともその作品で出会った。本作では川口はボコボコのリンチにあう。

さて、物語は島田克巳はU大学の四年生。気難しい銀行員の父と常に顔色を伺っている母にやりきれなさを感じていた。大学野球リーグ戦でU大が優勝した夜、歓喜と熱狂の最中、克巳と友人の伊藤はその夜知り合った女子学生のビールに睡眠薬を忍ばせ、犯した…と簡単に説明するとこんな感じで、市川崑による青春映画で、戦争によって、人生における最も基盤となるべき訓練を受ける時間を持たなかったこれらの失われた時代の人々が、青春の本流のままに爆発する姿はそのまま現代の苦悩を表すものであると監督がプレスシートで言っているように、その苦悩の実態を貪欲に映し出したパッションと孤独のコラボレーション、それを傍目から冷静に見極めた作品である。

この映画って原作者自身のキャラクター設定でいるよな多分?ちょっとあやふやだから言及しないけど誰だかは。正直タイトル以上に惨たらしい描写があるわけではなかった…。ただただ川口浩がかっこいいのと若尾文子がかわいい…映画だった。市川が三島由紀夫原作の「炎上」を監督して一躍世界的に有名になった監督は周知の通りだと思うが、それ以前の彼のフィルモグラフィーの中ではこの「処刑の部屋」と言うのは話題になった映画だと個人的には思う。若者のみなぎるエネルギーをあえて肯定的に描いているような、いわば若いんだから喧嘩も恋も好き勝手にやれ、何も心配することない的な演出、反抗するのが当たり前と言わんばかりの青春が描かれていると感じる。これから"銀残し"の撮影で「おとうと」を川口主演で迎える…。
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