MasaichiYaguchi

嘘八百のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

嘘八百(2017年製作の映画)
3.5
演技巧者な中井貴一さんと佐々木蔵之介さんがW主演で「百円の恋」の武正晴さんが監督した本作は、“獺と古狸”が騙し合いを繰り広げるコメディ映画。
本作で騙し合いのモチーフになるのが「幻の利休の茶碗」なのだが、私のように茶器や香炉が好きでも目利きが出来ない素人は「開運!なんでも鑑定団」にでも見て貰わないとコロッと騙されてしまう。
この作品は名作「スティング」を思わせるようなリベンジ絡みの“騙し”が、主人公たちの共通の仇敵である大物鑑定士に仕掛けられていく。
本作は「スティング」程の意外性や溜飲が下がるような“仕掛け”はないが、その何とも言えない緩さが「お正月映画」らしい。
ひょんな契機で知り合ったしがない古物商の小池則夫と腕は良いのに落ちぶれた陶芸家の野田佐輔を、中井貴一さんと佐々木蔵之介さんが漫才の掛け合いのように活き活きと演じている。
そして共演者たち、友近さん、坂田利夫さん、木下ほうかさん、塚地武雅さん、森川葵さん、前野朋哉さん等が主演の2人を盛り立てていく。
前野朋哉さんが演じる野田の息子・誠治の趣味、ジオラマ製作シーンが何度か印象的に登場するが、このジオラマは自分の思い描いた世界をミニュチュアサイズでリアルに表現することだと思う。
主人公たちは積年の恨みを晴らそうと騙しを仕掛けているが、私には架空(嘘)をリアルにする仕掛けは「嘘から出た実」を生み出そうとしているように見える。
果たして最後に笑うのは誰なのか?
笑顔が印象的なラストがほんわかとした気分にさせてくれます。