あでゆ

アフターマスのあでゆのレビュー・感想・評価

アフターマス(2016年製作の映画)
3.6
アメリカのオハイオ州、コロンバス。建設現場の現場監督ローマン・メルニックは、妻と妊娠中の娘が搭乗する旅客機の到着を空港で待っていた。だが彼は、空港の管理会社から二人の乗った航空機がほかの航空機と空中で衝突したと言われる。その後、残骸が散らばる現場で娘の遺体を発見し、悲しみに打ちひしがれるローマン。表面的な補償で済ませようとする航空会社に怒りを覚えた彼は、責任の所在を執拗に追及する。やがて、ある航空管制官が事故に関与していることを知る。

『サボタージュ』もそうだったけど、シュワちゃんサスペンス俳優として割といい線いってきたんじゃないですかね?
とはいえ、まだ演技力足りてないなと思うところも沢山あったので、今後もこういった映画の出演に期待。
暴力ヒーローだったアーノルド・シュワルツェネッガーが、殺しによって決定的な罪を背負うという作品の方向性が、彼のキャリアをメタ的に評価しているようにも思えた。

第一幕、ローマンが空港を訪れてからがかなり痛ましい。
異常なまで多くの違和感に満ちている港内。職員はめちゃくちゃ冷静に対応していて、ローマン自身もまさか事故が起きたなんて……みたいなことは心のうちで否定している。遺族とすれ違ったときのローマンの「ピンとこないようにしている」顔がとても切ない。その不安を解消するように「飛行機はもう着いたんですか?」などと落ち着きながらもめちゃくちゃ質問するローマン。

事実を伝えられたときの演出も巧妙で、本人がめちゃくちゃショックを受け慟哭するのではなく、隣の部屋の壁が揺れ、怒りの声が漏れる様子を映すことでそれを表現する。ローマンの心の内が崩壊しているさまを見事に描いていると思う。

第二幕以降は、遺族に誰も謝らないというのが辛い。企業側は自分たちの責任を認めないために絶対に謝らない。それに殺された航空会社のプレミアムメンバーズに入る権利を授けようというのは対応として冷たすぎるなあと思うが、実際にありそうな話ではある。
ジェイコブが罪を受け入れず、絶対に謝らないで「あれは事故だったんだ」と否定する姿も痛ましい。それぞれで謝らない理由が違うんだけど、ローマンにその違いは読み解け無いんだよな。そのあたりが非常にリアルだと思う。あとジェイコブの嫁もなかなかに冷たいよなあ。

ただラストは個人的にイマイチだったというか、ローマンが罪の意識を背負って生きるというのはわかるけど、あそこで別れて終わってしまったらただ逃してもらえただけみたいな印象が残ってしまう。
その罪の十字架によって、ローマンがどう変わってしまうかもう少し見せてほしかった。
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