ひよこまめ

火花のひよこまめのネタバレレビュー・内容・結末

火花(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

小説は既読、ドラマは未視聴。
ディテールを言ったらキリがないと思う。笑いの哲学がぎっちり詰まってると感じたし、芸人をやってる人たちのヒリヒリするような渇望も感じられた。

神谷の10年は、マキと別れたところから下降線になったように見える。借金にまみれ、マキとは正反対のデリカシーのない女と暮らし、ちょっと売れた徳永の髪型やファッションを真似て徳永に幻滅され。

それでも、神谷はブレない。

徳永にとっては、過ぎてみれば一時の夢のような10年、その10年を過ぎても変わらず今もお笑いが現実の神谷。

その神谷の奇行を徳永が常識で諭す場面、原作にはなかったように思うけれども、映画でははっきり描かれていた。
そこは、原作を読んだときに自分的には認めたくなかった部分で、二人はなんだかんだ言ってもいつまでもどこまでもお笑いの世界でじゃれあっていくんだと思いたかった。

でも、板尾監督はそこを、二人の道はもうはっきりと分かれてしまった「現実」をきっぱりと描いた。今はパリッとしたサラリーマンの徳永と、何も変わってない神谷をはっきり見せることで見えてくるのが、お笑い道においては神谷こそが勝者というような構図で、そこには自分もお笑い界に生きる者としての板尾監督の覚悟やプライドや愛情といったいろんな思いが詰まっているように感じた。
この物語のタイトルが華やかな「花火」ではなく、一瞬で弾けて消える「火花」であることの意味もストンと府に落ちた。

桐谷健太の「ブレない神谷」がとてもよかった。
菅田将暉、あっちこっちに出過ぎで食傷気味と思いつつ、上手いなあと思う。
そして、マキの木村文乃がすごく良かった。

ドラマの評判も良いので見てみたい。
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