10年かけて一発打ち上がった花火。その鮮やかさを知ってるか。どんどん売れていく芸人の裏で、敗北を期す者たちの面影。火花のように散っていく彼らの、火花にもなれなかった彼らの、すべてがここにある。
正直、映像で語らなくてもよかったかもしれない。小説は未読だが、名作なんだろう。言葉の端々に、又吉さんにしか書けない言葉があふれていた。
つくられた言葉ではなく、自らの体験から出た言葉たちの数々。
「臆病でも、勘違いでも、救いようもない馬鹿でもいい。常識を覆すことに全力に挑める者だけが漫才師になれるんだ。」
「それは、だめな龍宮城みたいなものだったかもしれないけど」
挑んだことのない者に、才能でもがく苦しさなどわからないだろう。それでいいのだ。そんなこと、知らないほうがいい。でも泥を飲み、重石に押しつぶされる日々を送って初めて見える世界もある。笑おう、つまんない毎日を変えるために。生きよう、幸せを噛みしめる日を夢見て。