Chico

きみの鳥はうたえるのChicoのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.3
原作は佐藤泰志の同名小説、「きみの鳥はうたえる。」函館市の映画館シネマアイリスの20周年記念として監督三宅唱が映画化。

舞台は言わずもがな函館。僕としずおとさちこ。3人の、”終わらない”夏の物語。

バイト先の同僚さちこ。彼女からすれ違い様に送られた合図に直観的に応えた僕。そこから始まった僕とさちこの関係。めんどくさくない関係。友達じゃないけど恋人でもない。
ルームメイトのしずお。以前同じアイスクリーム工場でバイトしていた二人だけど、家賃を安く済ませるため、とかなんとかで同居人となった。
同じ部屋で暮らすしずおにさちこを紹介するのはごく自然なこと。2人は出会ってすぐに惹かれ合った。僕はそれに気づいていた。

ゆらゆらと揺れる、たよりない呼吸が混じり合う時間。永遠に続いてほしい時間。ってある。

男2:女1ってもう不穏な予感しかしない。黄色と青を混ぜたら何色になるとわかっているように感情の着地をある程度予想して観始める。が、、予想に反して違う色になった。そして不穏どころかいい気分になってしまった。

役者さんのお芝居はナチュラルで、ロケ地もリアルなので現実味はあるんだけど、3人の関係性以外の出来事はフィルターの向こう側で起こってるかのようにぼんやりしている。(暴行のシーンでさえ)。感情の動きだけで物語が進んでいく。これがすごく良い。感情の導線に気持ちよく乗っていける。

互いの気持ちを直接的な言葉ではほとんど発しない。だけど気持ちの交わりは手に取るようにわかる。シンプルで説得力のあるカットの連続。そう感じざるを得ないような巧みさで登場人物の感情に鑑賞者を巻き込こんでいく。

映画全体の雰囲気は一見だるっとゆるっとしてるけど、同時にすごくクリスプ。潔い編集のせいか、ブルーウィッシュな画面から漂う夜明け前のまだひんやりとした空気か。音楽(Hi’Spec、OMSBのラップ)もまたその一因であると思う。
石橋静河演じるさちこが音楽に陶酔しきって踊るシーンが気持ちいい。そして柄本佑の表現力に釘付け、目が離せなくなる👀


以下ネタバレ








とって付けたようなモノローグ(劇中最初と最後に2回出てくる)もその重要さに鑑賞後少し経って気づく。最初が僕、最後はしずお、と語り手が替ることで2人の立ち位置、役割が替わる。これがラストのさちこの返答へと繋がるんだろう思う。
しずおは母親が言うようにやさしい男の役割を運命づけられているのか

そして映画はおわるけど彼らの日々はどうにかこうにか続いていく。
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