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大人のためのグリム童話 手をなくした少女のmoimoiのレビュー・感想・評価

5.0
全編が手描きのアニメーションだからこそ生み出せる〝間〟の美しさが素晴らしかった。
自分を見失った父の顔、悪魔から見えなくなる少女の姿、逃亡する母子、そしてあの詩的なラストシーン。
ときに繊細に、ときに暴力的に、躍動する筆が物語の深淵を覗かせる。

少女から大人の女、そして母へと開花していく主人公の生々しく肉感的な肢体は、たしかに体臭をもってそこに存在した。
3DCGのように緻密に描くことだけが「リアル」ではないのだ。
アニメーションの本来の意味、命なきものに生を吹き込むという行為の原始的な魅力がこの作品にはある。

物語の根幹には〝女の自立〟があるように感じた。
守られるだけの存在だった少女が、父権的な世界から離れ、何ものにも寄りかかることなくたくましく生きていく。
自身で選択し、守り、次のステージへ歩みだす者になっていく。
童話に監督の解釈も含まれてはいるのだろうが、〝ものがたり〟というもののプリミティブな面白さがある。
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