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赤線地帯のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
3.7
こういう映画ってさ、逃げてきたというか、目を逸らしてきた舞台をぺけぺけと映していくから、どういう感情で見たらいいのかわからなくなる。

笑っていいんだっけこのシーンとか思ってしまう。
一人一人の物語が、どんな人にでも起きうる、とても人間味溢れるものなんだけど、その人たちが働いている場所を見ると、あっち側の人って思ってしまう自分。

キャラクターたち、それぞれに人生があって過去があるんだけど、
この映画で彼女たちが一番時間を過ごすのは、「夢の里」の中。
実際に、寝ている時間を考えなければ、彼女たちがその時期に一番長く時間をすごこしていたのは「夢の里」なんだろう。
いろんな人生があるけど、その同じ空間に集まるというその社会性で、群像劇というものが成り立っている。

赤の他人のはずなのに、結構お互いに人生に影響及ぼしあっている。
ただの職場って感じではないね。舞妓さんとかもそうだろうけど、ほんとに家族なんだろうな。家族も言ったら他人だしね。

パンフォーカスで、3つのステージに役者を配置するこの時代の構図は、こういう群像劇にはもってこいなんだろうな。
見てる方も、自分が見たい人を見れるし、無意識の中でその空間を作り出してるキャラクターの動きも目に入る。
役者があんまり動かないっていうのは、日本映画の特徴だと思うんだけど、会話のテンポがそれを補ってて、演劇舞台見てるような感覚。
そもそも、舞台演劇を映像に撮ったのが始まりだったりするだろうし。

モノクロだと、やっぱり舞台と時間の変化がわかりにくくて、フェードで黒に落ちるのとかって、しょうがないのかなって思う。JLとかこの時代からあったんだろうか?そういうのがなかったから、演劇を見てる感覚までしか辿り着かなかったのかな。

柱とか、手前に舐めさせてるのも、3次元空間の演出なんだろうけど、なんか上手いこと言ってない気はする。この当時はまだその分野が発展していないのか、それとも意図的なのか。勉強不足だ。

ライティングも結構自然だった。
でも、こんだけパンフォーカスするってことは、かなり照明焚いてるよね。それで自然さを作り出すのも大変だろうけど、そこに演出を加えないのも、自分的な好みとして勿体なさを感じた。

音楽は、いうまでもないか。
悲鳴か歓喜か。
悲喜劇とはよく言ったものだ。
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