ケンヤム

全員死刑のケンヤムのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
4.8
この映画に出てくる登場人物たちは、ひとごろしだ。
なのにこんなにも愛くるしいのはなぜだろう。


映画を見ている時、そんな気持ちになることが多々ある。
憎むべき人々がなぜか愛くるしくてしょうがない。
もちろんこの映画は、実際に起こった事件を元にしているのだから、現実に存在したあの人殺し一家のことは憎むべきなのだろうが、スクリーンに映るあいつらはどうしても憎めないのだ。


それはなぜか。
彼らは私たち自身だからだ。
ヘマをして、責任を放棄する。
死を何よりも恐れ、常にオロオロしている。
自分の所属する組織の崩壊を恐れるあまり、外の人間を残酷なまでに痛めつける。
そして、それが自分たちの首を絞めていることにも気づかないという愚かさ。
どれを取っても、私たちと同じだ。
というか"私"と同じだ。


「自分よりバカなやつを見ると安心するじゃないですか」
私たちもこの映画に出てくるバカたちを見て、こいつらよりはマシだと安心していないか。
そうやって、安心している時私たちは「バカ」になる。


この映画のラストのセリフ「バッカじゃねぇの」は私たちに向けられたものなのだ。
「こんなもの見て、こいつらよりはマシだとホッと胸をなでおろしてんじゃねぇ。バッカじゃねぇの」
ということなのだ。


みなさんメリークリスマス!
ケンヤム

ケンヤム