冨永監督の作品はパンドラの匣、パビリオン山椒魚を観ていた。
原作も読んで鑑賞。
オープニングの水着が排水溝に乗って詰まるシーンは、これから起こることを感じさせて最高の始まり方だった。素晴らしい。
撮影はよくていいシーンがたくさんある。
ホテルのシーン等、顔を映さなくなって固定されるアングルが多用されて好きだった。
ライブハウスでのキスシーンはオダギリジョーの演技も有って良い!
その後ノイズが入りだす演出は唐突かも...
BBQ後のシーンで走る車の俯瞰に、彼らの曲が乗ってくるシーンはワクワクした。
歌唱シーンでラスト締めるのも妥当、やくしまるえつこ製作で説得力もある。
◯主題
ツチダはこの映画でも何度も描かれる通り、なにかのせいにして付いて行ってしまう女性。
援交しかり、帰ろうとするハギオを呼び止めてみたり。太賀との生活は特にそう。
それだからこそ最後の道を別にして歩いてくシーンはいい。
以外、ひたすらくさします。
ごめんなさい。
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冨永監督について、非現実的な雰囲気で、独特のふざけ方をする作風という印象だったので
現実的な設定で微妙にズレたやり取りがあるのが今回とことん気に食わなかった。
恋の終わりを描くにあたって、序盤全く登場人物に肩入れをさせない作りになっているが、これで乗れない。
キャバクラを始めて割とすぐに援交。
援交を持ちかけられるシーンは、光石研の面白さを引き出す為の長回しなのかもしれないが、
臼田あさ美の下手さと、このやり取りの不自然さが目につく。
その前にお金に困ってるというシーンさえないので、そもそもキャバクラを、ひいては援交を始めることが引っかかる。
濡れ場も中途半端で、水着に着替えるシーンの前で切る、
2回目の援交シーンでは下着でゴロゴロするだけ。無い方がまだ良い。
(原作では濡れ場がバッサリ描かれないところが良かった。)
光石研がもっと太らないとって臼田あさ美に言うが
予算のせいなのかと思うが、
バイト先がライブハウスになったこと
(撮影スケジュールが取りやすい為としか思えない、臼田あさ美が下手な説明セリフを言いながらリズムに乗るシーンはギャグすぎて...)
キャバクラの同僚が昔ハギオの彼女だった設定が無くなる
(バンド仲間がカーセックス、グラドルと仲良くなるBBQに時間を割くならこっちに時間使ってほしかった)
唐突にキャバクラの同僚と仲良くなっている。
夜と思われるシーンで明らかに昼であることが多い。
(バンド仲間との飲み会、BBQ、ハギオと立ち飲み、ラストのリハ〜その後の歌シーン...)
これはほんとに何か意図があるのだと信じたい。
バンド仲間の店で働き出す設定も物語上まったく機能してない。
ダメでカッコいいオダギリジョーはうまいが、なんども見たダメ男オダジョーで目新しさは無い。
家も割と広いし(たぶん旧式のお風呂が気に入ったのだと思うが)貧乏に見えない。
バンド仲間が太賀をくさすシーンはリアルさの無いセリフが延々と続きウンザリした。
最後の歌は原作にあった、せいちゃんが近所で仲良くしてた猫を、ツチダは別れるまで知らなかったというエピソードのオマージュで、
(これ自体は素晴らしいが)
この曲があれだけ昼居酒屋で売れ線の音楽をバカにしてた奴が作るものか...
あと臼田あさ美の服はなんだろう、個性がないと言うか、変にオシャレと言うか、
もっとツチダってダサい服着るんじゃないか。
特に良くないのは、
援交がバレて喧嘩するシーン、太賀のびんじょうすんなよのセリフが流れてしまったのは致命的で、
前述の主題がボンヤリした。
『個人的な恋の話を、普遍的な恋の話に。』
ということだったが、自分にとっては
普遍的かつ個人的でもある原作の恋の話が、ぼんやりとした薄い恋の話になった気がする。
エンディングに主人公の独白モノローグ入れる映画は、観客の後味を限定するので美しくないなと思う。