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孤狼の血のとぽとぽのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.5
白石監督×松坂桃李、両者にとっての代表作で、深作作品のように語り継がれるであろう血となり肉となる傑作。更に磨きがかかり研ぎ澄まされてく演出に歴代の名だたるヤクザ映画への溢れんばかりのオマージュ。単なるパロディではなく一種、時代錯誤の気持ちよさ的な振り切れたものがある。正直、『凶悪』の頃から白石監督の作品は面白いけど何処か合わないかもと思っていたけど、それを個人的に気持ちよく裏切られた分岐点が前作『彼女がその名を知らない鳥たち』であった。見事に自身の作家性と世界観を壊すことなく愛を紡いで見せた。そしてその作品に出ていた松坂桃李と竹野内豊が本作では見事に自身の殻を破っている。いや、他のメインキャストもそうだ。役所広司さんもべらぼうに素晴らしい。
松坂桃李は自身に素直で軸をぶらさずに来たからこそ、世間には素直じゃないと思われるかもしれない役者だ。彼は少女マンガの実写映画化という"若手イケメン"が通る道を進みかけた後に暫く見なくなった。そして僕たちの目の前に現れたかと思うとそれは『MOZU』や『図書館戦争2』以降、悪役や主役ではない三番手、四番手といった"脇役"を主戦場にしてみせた。それは事務所のゴリ押しとは全く異なる、作品の規模に関わることなく恐らく自分がこれなら出たい、これは遣り甲斐があると感じたり心の琴線に触れた作品を素直に選んできたからこそ。だから彼は今やその動向が最も気になる、あるいは将来が期待され、楽しみで、約束されている実力派俳優と見事に成熟した。本作の彼は"名優"という地位を確固たるものにしているベテラン役所広司の好演が光る中盤までは今まで通りのイメージな学のある真っ直ぐな"好青年"という佇まい(ダイワハウスのCMで競演してからどれだけの月日が経っただろう)。それが物語がある大きなプロットポイントを迎えた時、彼が獣に豹変する。観客が期待する純粋無垢からの落下具合、その気持ちよさたるや!あまりに吹っ切れた暴力シーンや決断の大きさも合わさって笑ってしまいそうになるほど。本作では彼のカメレオンさが見事に光り気持ちよく昇化されている。周りにすっと溶け込むように、いつまでもスター然としない佇まい。『娼年』が俳優・松坂桃李にとって一皮剥けた作品だとするなら本作は二皮も三皮も剥けた作品だと最後には気付くだろう。客席にもたれた唖然としたまま。。
警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃーーーー豚に真珠とはこのことじゃ。骨抜きどもで溢れた平成の終わりに投下された昭和の終わりの広島を舞台にした本作、これを待っとんたんじゃ!こらを見て皆、上に媚びるのは止めましょう。(個人的に)今年一番の期待値だったが想像通りに想像以上で最強に最凶・最狂で最高に荒ぶる胸熱さで、平成ヤクザ映画の金字塔!!正直実尺に対してあっという間で短く感じる、みたいなことは無かったけど伝統的なヤクザ映画のマナーに乗っ取りながら笑いと暴力を量産し、終盤には息を飲む展開が目白押し。ビックリドッキリクリトリスじゃ。おう、吸っとった。
P.S.エンドロールのバックにも出てくるあの個々のキャラ毎のポスタービジュアルが痺れるほど格好良いな。特に江口さんの「シャァ!」みたいな顔が大好物で真似したい。あの感じでパキッとした写真撮ってほしいものだ。あと、ピエール瀧は"いい方"のピエール瀧だった。
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