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人生はシネマティック!のwtson322のレビュー・感想・評価

人生はシネマティック!(2016年製作の映画)
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WWII下の映画を用いたプロパガンダ政策の広汎さに驚かされる。映画の力はもちろん、時代的にも"紙"が画面に充ちていたのも面白かった。タイプライターの重量感とか、放り出されて宙に舞う原稿とか、鉛筆で書き直されるプロットとか。
ポテトの包み紙に使われていた新聞紙上に見つけたコピーに目を留めたことが、主人公2人が出会うきっかけになるわけだけど、こういう"紙"の贅沢な使い方は、映画ならではのノスタルジーを喚起する。このシーンもよかったね。何より芋ってのがイギリスっぽくて好き。
プロパガンダと言えば、今作はプロパガンダの二面性を上手になぞっていたと思う。主人公のカトリンは単なる戦意高揚のためだけでなく、ウーマンリブ・大衆映画的な内容も盛り込んだもう一つのプロパガンダとしての映画を成功に、そして自身をも啓蒙するものへと導く。しかし、終盤の"一般の人びと"の反応からもわかるように、啓蒙された"いい人たち"、そして形成された暖かい絆さえをも飲み込んでしまうのが全体主義であり、プロパガンダの二面性は表面的なものにすぎない、みたいに解釈できるかもしれない。
時代はチャーチル政権下で、ちょうどあのダンケルクの後の話。原題の"Their finest"はチャーチルの演説からとったものらしいし、ノーランの『ダンケルク』も見えざるチャーチルの存在を感じたけど、やっぱ彼って作品映えする人なんですよね。
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