ろく

ジャコメッティ 最後の肖像のろくのレビュー・感想・評価

4.1

始まった瞬間から好きになってしまった。
アーミー・ハマーさんの英語の発音と声音。灰色の多い背景に際立つタバコの火。夜の街で滲むように明るいレストラン。窓に映る女性の表情。どこを切り取っても映るジャコメッティの彫像。そして軽やかな音楽。全てが驚くほど好みだった…。

内容は思っていた以上にドキュメンタリー。ハリウッド的な盛り上がりはあまりない。
ただ、ジャコメッティとその周囲の人間模様に振り回されるジェイムズに、知らず知らずのうちに観客は「成りきって」しまっている。彼と同じように一喜一憂し、ストレスを感じ、名匠の作品と人生に飲まれていく。巧みにそうなるように仕向けられる演出に、唸るしかない。

観終わった後は、くすくす微笑みたくなる。楽しいだけの作品ではないけれど、まあこんなものだよね、といい思い出になるような物語。
ろく

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