ブタブタ

ブライトのブタブタのレビュー・感想・評価

ブライト(2017年製作の映画)
3.5
“ブライトのみがワンダの力を制御できる”
オープニングでLAの街に描かれたグラフィティアートが次々に現れる。

「オークは人の為に戦う。ではオークの為に誰が戦う?」
「神は全ての種族を平等に創造した。でもエルフは特別である。」
「(オークの絵)ブタ野郎」
「魔法に死す」
「(怪物に)注意」
「ダークロード」
「自分らしくあれ」
「支持されてるのはオーク抑圧の為」
「フェアリー駆除」
「ジラクよ再び」
「オークは失せろ」

警官に暴行を受けるオークのバンクシー風アート。

《エルフ地区》
《エルフ限定》
《保釈金積立・オーク語OK》

「ダークロードは復活する」
「警察を呪え」
「光の盾」

この数分のオープニングだけでこの世界がどうなってるのか、状況や対立構造、誰が支配者で誰が虐げられてるのか、人間とオークとエルフの関係、過去に行われた戦争や、そしてその目的「魔王」「伝説の戦士」まで全てがわかる。
グラフィティアートが「絵巻」「歴史書」の役割まで果たしている。

デヴィッド・フィンチャー『セブン』やザック・スナイダー『ドーン・オブ・ザ・デッド』のオープニングに匹敵する素晴らしいクレジットタイトルデザインだったと思います。

このグラフィティアートと標識、一文の限られた情報だけでこんなにも「物語」を表現出来る。
これこそがまさに「詩」なのではないでしょうか。

最近『エンドレスポエトリー』と言う素晴らしい「詩」がテーマの映画を見てしまったので「詩」について考えたり、ロートレアモン、ランボーと言った詩人の詩を読んでいるため又意味不明な妄想に耽っております(*゚-゚)
同じく「詩」がテーマの映画、見逃した『パターソン』も早く見たいです。

でも残念なのは本編がこの短いオープニングを超える事は無かった。
ウィル・スミスはいつものウィル・スミス。
「良き夫良き父親」の同監督の『スーサイド・スクワッド』及びあまたの主演作とまた同じ。

一番好きなシーンはロス郊外にオーク達の根城、まるでファンタジー世界の城がドン!と建っている場面。
それと全く活躍はしませんでしたがさりげなく後ろに立っているケンタウロス警官が現実と異界が融合したファンタジー世界の演出として一番成功していたと思います。

オーク=黒人でしょうけど、経済を支配し偉そうな割にちょっとおバカに見えてカンフー(?)使いでいくら残酷に殺しても心が痛まないエルフはアメリカ人から見た中国人をイメージしてるのでは?

異世界と繋がり亜人と人間が共存する世界は自分の様な中年(笑)オタク層には「懐かしい」と感じる世界ですね。
80~90年代にかけてのラノベ勃興期にこの手の作品は雑誌『ドラゴンマガジン』に連載されたり、特にファンタジー系に力を入れていた角川の漫画・アニメで非常に多く作られていました。
MEEくん『はいぱーぽりす』が一番近いですか。

『スーサイド・スクワッド』でも思ったのですがデヴィッド・エアー監督は警官モノは得意でもファンタジーを描くのは不得手なのでは。

今回はプロローグ、連続ドラマのパイロット版という感じなので、とにかく続編に期待します。
ブタブタ

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