MinaMi

ファースト・マンのMinaMiのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.4
月はガンダーラでもなければエルドラドでも、ましてやオズのエメラルドの都でもない。
そこに行けば願いが叶うというわけでもないのに、人類の大いなる飛躍のために、飛行士の命も大量の税金も注ぎ込み宇宙に踏み出す合衆国。月の開拓は子供じみたソ連への対抗意識からであり、ベトナム戦争で命を落とす若者や貧困と暮らす黒人達からの冷ややかな視線も客観的に描かれる。
全編静かな表現の中では、ニール自身の月への憧れは明確には描かれていない。シーンを映すカメラは時々揺れる。本当に彼はファーストマンになりたいのだろうか。迷いと戸惑いを感じる。アポロ11号に乗り込む姿でさえヒーローめいた明るさはなく、ただ静かだ。地平線を飛び立つと、まるで宇宙に落下していくような目眩を覚える。
静と動の緊張感にクラクラして集中力が途切れそうになる。
ニールが月に残してきたものには、どんな意味があったのだろう。永遠の天国としての月に大切なものを捧げることで、月を見上げるたびに会えるようにするためだろうか。そんな切なさを思うとグッときた。
そして亡くなった宇宙飛行士とその家族達。人類の進歩の裏にある数々の犠牲に想いを馳せる。

・脚本 6/10
・演技 7/10
・演出 7/10
・音楽 7/10
総合点 27/40
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