人類の月面着陸に至るまでの静かな犠牲と闘いの軌跡。
これまでの作品内のリズミカルなテンポから、ものすごくゆっくりした間を持たせるようになった印象。
宇宙に夢を見た男の姿と早くして最愛の娘を亡くしてしまった男の虚無感が重なる。
月面着陸という歴史的な快挙は、実は1人の人間が死を悼み、向き合うための回復の過程だったのかもしれない。そんな解釈が『ファーストマン』では感じられた。
作品自体も、すごく1つ1つのカットが壮大で、どうやって撮ったの!?の連続。冒頭から中盤にかけてのロケットや宇宙のシークエンスのいくつかには酔った。笑
それくらい緩急の付け方が上手かったな。結果はわかっているのに終始ヒヤヒヤさせられた…。
印象的なのは、月面着陸を達成するまでじっとその場に立ち止まっているような主人公たちと対比するように彼らの妻たちが時間的な変化を服などによって視覚的にあらわしていたこと。
ホルターネックのワンピースから徐々にカジュアルに、ラストではスウィンギング・ロンドン風のシャツにミニスカート。
対比的に描くことで、変わらないものと変わるものの差なんかも感じられたな。
改めて、ライアン・ゴズリング演技派だなとしみじみ。笑
特に娘を失ってから、自室で涙を流す姿があまりにも良かった。