Daisuke

ファースト・マンのDaisukeのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.0
人類の探究心に終わりなどないのか。

改めてそう感じずにはいられないほどの凄まじい熱量。失敗に次ぐ失敗、多くの犠牲の上にある成功。手に汗握る緊張感。執念といっても良いほどの気迫。なるほど、さすがチャゼル監督である。『セッション』の時と同じではないか。人間の執念と飽くなき探究心を見事に描いている。

これは覚悟の物語だ。クルーやスタッフは元より、その家族までもが強い覚悟を持って挑まなければならない過酷なミッション。壮大なロマンと栄光の影にあるのは残酷なまでの人々の想い。遺された者たちの哀しみ。これから夫を宇宙へ送りだす妻の、もう二度と会うことがないかもしれないというその覚悟は計り知れない。

「人類で初めて成しえた者」ニール・アームストロングは過度な喜びも不安も見せずひたすらに任務を遂行する。だがその冷静さの裏には強い覚悟と意志があったこともわかる。そしていつも根底にあるのは愛娘への想い。今作で主人公を演じたライアン・ゴズリングは、セリフの少ない役どころの中、見事に演じたと思う。表情で語るその演技は本当に素晴らしい。

誰もが抱く宇宙への憧憬の念。ロマンであり人類の野望。しかしそこにあるのは輝かしいものだけではないのだと改めて思い知る。人類の叡智の結晶を嘲笑うかのような想定外のアクシデント。常に死と隣り合わせの神の領域。宇宙とはこんなにも恐ろしいものなのか。

だがそれでも。

それでも、もし自分が宇宙へ行ける切符を手に入れたとしたら・・・(もちろんそんな可能性などないことは百も承知だが)・・・何の迷いもなく旅立つことを選ぶだろう。

【IMAXにて鑑賞】
Daisuke

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