ぺんじん

ファースト・マンのぺんじんのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.3
うわぁ渋い…宇宙の映画なのに激しく渋い!
それというのも主人公のニール・アームストロングが無茶苦茶寡黙で、奥さんにも気持ちをあまり伝えず、テスト飛行で顔面に大怪我を負っても無表情で「大丈夫、大丈夫。問題ない」という感じ。あまりにも寡黙過ぎて、子供たちに月に行く事を伝えてなかったので、奥さんにかなり怒られる始末。ちょっと笑ってはいけないシーンなのに笑いそうになってしまった…もちろんちょっとした行動や表情の変化はあるんだけどもかなり分かりにくいね…
なのでこの作品では宇宙船の中で観客がアームストロングの隣に無理矢理乗せられるような主観的な映像の連続で、嫌でも彼の気持ちに寄り添わされる!剥き出しのネジ、剥き出しのコード配線…大丈夫なのか…しかも宇宙船が発射したあと画面がかなり揺れるので結構気持ち悪くなる。宇宙船の中ではあまり体も動かないので、鉄の棺桶に入れられている気分に…。
当時の科学技術の限界もあってか、仲間たちが次々に犠牲になるシーンはやはり辛い。そんな苦しみにめげず、あくまでも冷静に自分のミッションを淡々とこなしていくアームストロングの頼もしさたるや!ライアン・ゴズリングの顔で静かに表現する感じが役柄にピッタリ!奥さん役のクレア・フォイはもう感情ぐわんぐわんで大変なんだけども。
そしていよいよ月面に降り立つクライマックス!だけども歓声も星条旗も無い、異様な静けさ…プロジェクトの成功というよりもアームストロングの個人的な葛藤、小さな娘を病気で亡くした悲しみ、その先の最後の到達点として月面着陸が描かれている。月面の静けさはあまりにも荘厳…とても禅っぽい。月面は枯山水なのか…最後の最後まで孤独で寡黙な男の戦いが描かれていて良かったな。まぁここがデミアン・チャゼルっぽいのだけども。
最後までかなり渋かったけど、アームストロングが奥さんと息子たちと楽しく戯れているシーンもあって安心。パンフレットに彼の息子たちのインタビューが載ってて、今までのフィクションの中で一番お父さんとお母さんに近かったという話を聞いてホッコリ。
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