太田康裕

ファースト・マンの太田康裕のレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.5
すごく好きな映画だった。
死との距離の取り方の物語。

ニール・アームストロングの視点に徹底的に入り込むカメラワークはけれどその心の一番奥に隠した扉を開け放つ所を見せてはくれなくて、
なるほど、気難しい側面のある人だったなどと言われる人物を見せきらない、という見せ方かと関心しながらクライマックスまでは見ていた。

そうして何かに憑かれたようにたどり着く月面は美しくも荒涼とした風景が広がっているだけ。
その月面クレーターの淵でニールの取る行動に彼が抱えていたモノの正体に気付かされたのだった。

なぜニールは月面を目指したのか、その理由の悲しいこと。
そしてそれはウサギやかぐや姫のいるという神話や神が死ぬ瞬間でもあって、ただただ涙が出た。

けれど、その偉業は確かに地上に暮らす人類を1つにまとめていて(いや、東側だけだという指摘はあるだろうけど)新たな時代の神話が生まれた事を教えている。

世界がその先どう進むのか僕らはもう知っている。
だからこそ、この新時代の神話は尊いし、いつまでも語り継がれるべき物語なのだと思う。