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ファースト・マンのgnspのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.5
チャゼルの「監督」としての腕の確かさを証明した作品。
過去2作にある爆発的なエモは鳴りを潜めたが、代わりに今回は非常に奥ゆかしく、五臓六腑に染み渡るエモを届けてくれた。
一方欠点だった中弛みは他人が脚本ということもあり、今回はそれほど感じず。ただ確かに「長い」とは思ったが、人類史に残る偉業を2時間余りに纏めるのだから仕方ないかな。

今作で特筆すべきはやはり「画質」。地上では当時を再現するような粗い画質だったが、宇宙空間と月では現代の鮮やかな画質になっていて、「分かるものと分からないもの」がはっきり区別されているよう。
月に対する「近くて遠い」という描写も、困難から一段落して見上げる、ヘルメット越し、パネル越しといった感じで、「見えるんだけど…!!!」っていうニールはじめクルー達の苦悩を表していて良かった。
そして、ともすればドキュメンタリーにしかならないテーマに奥行き、そして「チャゼルっぽさ」を与えたのはジャネットたちはじめ家族の存在。クルー達をヒーローでなくいち夫・父として捉えるのは、序盤の面接の「二つの立場から見える」というニールの言葉にも通ずる。
終盤、いよいよ飛び立つという時にその「もう一方の立場」を真正面から問うてくるジャネットの言葉がグサグサ刺さる。そしてそれを受けたニールのやることとは。

音の演出は「さすがチャゼル」としか言いようがなかった。所々に2001年オマージュ(宇宙テーマの作品では避けて通れない!)を入れつつ。
そして「そうだよね、宇宙船って棺桶なんだよね」って思い出させるような演出には、生き残ろうがなかろうが背筋が凍りっぱなしだったわ。

「チャゼル3号」に与えられた、「監督に専念させてみる」というミッションは成功。
でも過去2作の強烈なクセが恋しくなる人は少なくないかもしれない。
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