放浪をするひとりの女性が亡くなった。彼女の最後の数日間を共にした人が語る、彼女の像とは。
以下ネタバレを含みます。
社会の隅に追いやられ、多くの人から煙たがられ、蔑まれ、暴力を振るわれる。しかしときには彼女に深く同情したり、憧れたり、心を開く人もいる。彼女は作中で一度も「ありがとう」を言わず、人からの施しを当たり前のように受ける。彼女は「楽して生きたい」と語るが、そう思うようになったきっかけや過去は描かれない。
物語の終盤、常に仏頂面だった彼女が泣き、ハイになって自暴自棄になり、母を思い出して独り言をいう。彼女の人間らしいところが垣間見えた。
複雑な余韻を残す作品だった。