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冬の旅のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.0
アニエス・ヴァルダ監督の最大のヒット作で、最高傑作との呼び声が高い。
撮影は パトリック・ブロシェ。
音楽は ジョアンナ・ブルゾヴィッチ。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。
原題:Sans toit ni loi 、(英)Vagabond (1985)

冬の寒い日、南フランス片田舎の畑の側溝で少女の凍死体が発見され、警察は単なる事故死として身元不明のまま共同墓地に葬る。
遺体はモナという18歳の少女(サンドリーヌ・ボネール)で、カメラは彼女が死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人たちの証言を通して、スケッチ風に辿っていく。

モナは、寝袋とリュックを背負い、ヒッチハイクの旅をしていた。
見ず知らずの人から飲み水やタバコの火を借りたりして、日雇いの仕事をしながら流浪する…。

~道すがら出会う人たち(一部)~
・バイクの青年
・車の修理工
・山中で山羊を飼う元学生運動のリーダー(ステフィン・フレイス)
・プラタナスの樹の病気を研究するランディエ教授(マーシャ・メリル)
・森の中で彼女を犯す浮浪者
・ブドウ畑で働くチュニジア人
・酒好きの女中(ヨランド・モロー)
・空き家をアジトにして盗みやマリファナの売買でかせぐグループ
・グループのアジトに火を放つユダヤ人青年ダヴィッド(パトリック・レプシンスキ)
・ワインの収穫祭で澱をかけようと狂乱し群れになって追いかけてくる男たち

「自由がほしい。
冬の旅は人が少なくて好き」

「自然に自由を選べば、孤独になる」

「自由と引き換えに菌をもらったわけ」

原題の「屋根もなく、法もなく」のとおり、社会のルールや価値観に従うのではなく自ら自由を選んで放浪する少女の生き様。
身勝手で、わがままで、決して他人に心を開かず、自由を体現して放浪する彼女は、そのために、垢にまみれ、臭気を放ち、どんどん荒んで、最後には誰にも知られず死に至るという代償を払う。
ドキュメンタリーからスタートしたアニエス・ヴァルダの眼差しには、少女に深く同情するような甘さはない。
味つけをせず生のまま提示される映像の力。
ヴァルダの崇高で厳しい目線、カメラ芸術の世界を堪能したい。
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