バン

嘘はフィクサーのはじまりのバンのレビュー・感想・評価

嘘はフィクサーのはじまり(2016年製作の映画)
2.5
これはなかなか変わった映画。まるで中世を舞台にしたシェイクスピア悲喜劇の戯曲をそのまま現代ニューヨークに置き換えて映画化した様な違和感が最後まで付きまとう。実はホームレスだったとか誰かの脳内世界とか夢オチとかを予想しながら見ていたけど最後まで違和感は消えないまま。フィクサーというよりは宮廷の狂言回しの様に現実感がないし、よく喋るけど常にどこか自信なさげな表情をしているのも気になる。いつも同じ服を着て、何処に住んでどんな生活をしているかも一切語られない。嘘というよりは欺瞞/自己欺瞞というべき レベルで、他人が欲しいものを得られるように手助けしようと良い意図を持ってした策略が思わぬ結果を生むというのもとてもシェークスピア的。赤い帽子の男は明らかにもう一人の主人公で『空騒ぎ』とかのアイデンティティの混乱を思わせる...と言うと強引かな。そういえば赤い帽子は『ヴェニスの商人』のシャイロックだし『リア王』なんかにも出てきたような....いずれにしてもコメディではなくせめて(原題にもある通り)シニカルな『悲喜劇』と言わないとそれこそ嘘になってしまうと思う。リチャード・ギア主演でなければ劇場公開されなかったかもと思ったけど自分は見る事が出来て良かった。たまに誰かと語りたいと思う映画があるけど、自分にとってはこれもそんな映画だった。
バン

バン