うめ

セザンヌと過ごした時間のうめのネタバレレビュー・内容・結末

セザンヌと過ごした時間(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

男同士の友情っていいな‥

近代絵画の父、セザンヌの絵画は世界中の美術館に飾られ、彼の名を知らぬ者はいない。彼の描くりんごほど印象に残るりんごはない。さまざまな視点から捉えられた姿を一つの構図に収めるその画風は後のピカソに代表されるキュビズムの先駆けとなった。彼の絵画は現実そのものではない。彼は、彼自身が感じる世界を、自然を、よりそのままのものとしてキャンバスに描きたいのだ。その考えと、作品は当初なかなか理解されなかった、しようがなかった。

当時流行の印象派とも一線を画し、父にも、世間にも、恋人にも、みんなに理解されない時、セザンヌはただ怒っていた!彼は負けなかった。自分を信じた。そして、いついかなる時も彼を理解し、尊敬したのは彼の親友で詩人のエミール・ゾラだった‥。


映画の中でセザンヌはまるで気のたった野良猫のよう。すぐ機嫌を損ねて、当たり散らして、皆を傷つける。本当のセザンヌがそんな人だったかは分からないけど、彼の執念を感じるような晩年までの不遇の時代の制作活動を考えると、彼の頑固さと強さは映画の通りだったのではと思う。
映画では2人が子供時代に会ってから、晩年、喧嘩別れして亡くなるまでを追います。主軸となるのは喧嘩別れが今生の別れとなる日。そこから過去の回想が挟まるといった感じです。若い頃も、おじさんになってもなんでそんなに喧嘩するのになんでそんなに仲良しなの!?って羨ましくなる関係性‥。ただ一つのヒビが2人を分かつまでの間。


音楽も映像もとてもよく、2人の人生が、喜劇と悲劇が、とても美しく描かれておりました。大変満足度の高い作品でした。
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