Iri17

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめのIri17のレビュー・感想・評価

4.5
国際恋愛の難しさ的な事を描いているが、揉め事や厄介ごとに向き合わず、常に逃げてしまう弱い男性の成長を描いた作品だ。

主人公はパキスタン系だが、イスラム教を信仰していないし、パキスタンのお見合い結婚という文化にも納得いかず自由恋愛を尊重している。しかし、彼はそれを家族に隠している。この2つを打ち明ければ勘当される事は主人公は充分わかっているためである。
また、お見合いをしている事、親に関係を話していない事も恋人に隠していたため、振られてしまう。個人的にはそんな怒る事か?とも思うが、現実に向き合わず、嘘をつき続ける主人公の気持ちは多くの人が共感できると思う。

主人公は突然の病で昏睡状態になった恋人を毎日訪れるうちに相手の両親と打ち解け、現実に向き合う人間として成長していく。主人公、主人公の家族、恋人、恋人の両親、コメディアン仲間など登場人物がみんなしっかりキャラが立っていて素晴らしかった。
主人公が恋人観る映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は家に閉じこもって、襲い来るゾンビを撃退するという話の中に当時のアメリカの社会情勢を投影した超傑作だが、これは周りの人物に誠実に向かい合わず、自分の心に閉じ籠る主人公を表しているだろう。
また主人公の部屋に飾ってあるポスターは『ショーン・オブ・ザ・デッド』だ。これはダメ人間の主人公がゾンビの襲来をキッカケに成長していくコメディ映画で、これも実にこの映画のテーマにマッチしている。

実に面白いし、よくできた映画なのだが、主人公の彼女がすぐキレるし、主人公の頑張りを全然分かってくれないし、かと思ったらすぐ手のひらを返す感じがイラッとした。
とはいえゾーイ・カザンはまた演技の幅を見せてくれました!
Iri17

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