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マッドバウンド 哀しき友情のtkのレビュー・感想・評価

4.0
面白かった。
着飾ることもせず同じリズムとテンションで物語が進んでいく。それでもストーリーにはメリハリがあって、重厚でリアルな雰囲気が好みだった。
そして、主役?の黒人青年の演技は物憂げで力強い。惹きつけられた。

WW2終戦前後のアメリカで色濃く残る人種差別に対する苦悩と葛藤をベースに描いた映画。
文化、環境、時代それぞれで築かれる価値観は違う。
そして人はその価値観を肌で感じ、時には違和感を感じつつもあるべき生き方を学び意識の深いところに取り込んでいく。
とはいえ、人によっては一つの経験がそれまでの価値観を全てひっくり返すような強烈なインパクトを残し、心に強く刻まれることもある。それは次第に確固としたものとなり、その信念に基づいた生き方をせざるを得なくなる。
黒人蔑視の価値観の中では許されないことでも、自分が受けた恩とその時交わした約束は死の境で自分の心の底から湧き起こってきたもので、気づけば備わったものではない混じりっ気のない自分自身の気持ち。そこに嘘をつくことはできない。

自分が生きる今の世界にも、別の視点から見ると違和感のある何かが潜んでるかもしれないと思わされたし、
それを疑うこともせず生きることはある意味自分を十分生きられてないという事なのかもしれない。

ただそういう本当の自分を見つけるのは当たり前に大変で、まずは外の環境に触れる事。

こうして書くうちに、与えられてしまった環境からいかに抜け出して自分を見つけるためにもがくか、が人生なのかもなってふと思った。
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