人間がばらばらであることの絶望と希望が丁寧に描かれていて非常に好ましく感動的。
極めて私的な印象かもしれないが映像の質感や複数人による会話を切り取る際のフレーム選択から人間の孤独への眼差しを感じる。
ガイド的な言葉を話すのに対して
「建築は嫌いだ。でも君が感動した理由を聞きたい」と返すのが大好き。ジンにとっては嫌いなものでも、ケイシーにとって大事なものであることを理解していて、違いを理由に拒絶しない。しかも借りてきた言葉ではなく自分の言葉で話してというのが素晴らしい。私とあなたの違いを受け入れそのままに対話を試みている。
冒頭に語られる「非対称」の話がこの作品自体の人物像や構図にも通ずるのは自明だけど、構図を見た時には、丹生に整えられた「対称」のショットが多用されるのも面白い。また、そんな静的なショットがほとんどの中で、強い運動を捉えるダンスのシーンが印象に残る。
ふたりのこの先は分からずとも、非対称的な人間たちが関わり合ったこの時間はよすがになると思うし、未来が開かれる可能性に満ちた良いエンドだ。
