本作が長編第1作だが、以前からVideo essay と呼ばれるものを多数制作しており、例えば《Passageways》というタイトルで小津を論じるといった具合である。その他ブレッソン(Hands of Blesson)やヒッチコック(Eyes of Hitchcock)、新しいところではウェス・アンダーソン(From Above)やタランティーノ(From Below)の名前が見える。日本人については、小津のほかに是枝裕和(The World According to Koreeda Hirokazu)について論じている。なお、論ずるとは言い条、その作家の作品のコラージュによって作品自体に語らせる手法を取っており、10分前後でまとめられたそれはドキュメンタリーというより、文字通りの visual essay という独立した作品の体を成している。公式サイトを含め、Kogonada をドキュメンタリー制作者のように紹介してしまう記事の書き手には、せめて原典にあたるだけの誠実さ(YouTubeで視聴可能)を求めたい。