ぶみ

コロンバスのぶみのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
4.0
コゴナダ監督、脚本、ジョン・チョー、ヘイリー・ルー・リチャードソン等の共演によるドラマ。
建築学者の父が倒れ、見舞うためにインディアナ州コロンバスを訪れた息子ジンが、図書館で働くケイシーと出会い、同じ時間を過ごす姿を描く。
「モダニズム建築への恋文」や「小津安二郎へのオマージュ」がコピーとして掲げられているが、建築物に対する知識や興味は乏しく、ましてや小津作品を見たことがない私としては、そんなことは全く気にせずに鑑賞。
ただ、コロンバスの街並みは素直に美しいと思うし、その街並みを背景に紡がれる余分な言葉を廃した二人の物語は、瞬きをすることが勿体ないと思えるほどに心を掴まれることに。
そして、観ている内に気づいたのは、殆どのシーンが固定されたカメラで撮影されているということ。
これが小津調なのかもしれないが、時に長回し、時に静物の俯瞰と、とにかく静が際立っており、だからこそ数少ない動の場面が印象に残る。
ジンとケイシーにとって、長い人生において二人が交錯する時間は一瞬だけれども、その一瞬をかけがえのない時間として穏やかな時の流れとともに、何気ない言葉で切り取られる映像は、一分の隙もない。
何か大きなことが起きるわけではなく、ドラマチックな展開が待っているわけでもないが、人生の殆どは平凡な毎日であるし、日々のその積み重ねこそが人間の年輪であり、そこに特別な言葉はいらない。
そんな静かな時間を追体験するためには、日常の雑踏音が消された映画館で観るべきであり、それは銃や戦闘で五感を楽しませるエンタメ作品とは対極に位置するが、これも映画の存在意義を感じさせてくれるもの。
静の行間にある人生の機敏を穿つ様が絶妙で、ゆったりとした時の流れに身を委ねる心地良さを味わえる佳作。

問題は、集中力の欠如か、興味の欠如か。

〜コロンバスで二人は出逢い、そしてまた歩き出す〜
ぶみ

ぶみ