AK

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のAKのレビュー・感想・評価

4.3
 大義のない戦争を遂行するには、真っ当なジャーナリズムは不要どころか邪魔となる。だからニクソンは、「『タイムズ』と『ポスト』を潰せ!」と苛立つ。

 トム・ハンクスは「政治家と記者が仲良く酒を飲み、それによって政治家を批判できない。そんな時代は俺たちで終わりにしよう」と演説をぶつ。

 メリル・ストリープは、男性中心主義の社会で、正当なる社主であるにもかかわらず、女だからという理由で飾り物のように扱われていた。サッチャーとパンクハーストを演じた彼女が、それを本作で打ち破っていく。

 この映画が現代アメリカで作られたことの意図はあまりに明確だ。さて、日本に目を移すとどうだろう。最高権力者は執拗に特定の新聞社を攻撃し、その支持者たちは恫喝めいた言論封殺を行う。

 記者の戦い、個人の告発は、すべてその裏にあるシステムのハラスメント問題が捨象される形でコンプライアンス問題となる。

 ただでさえ民主主義国家のなかで最低レベルだったジェンダー指数は、さらに下降を続けるどころか、権力が男のセクハラを守る。

 我々日本人にとって、この映画は、戦後日本最低の内閣、第二次安倍政権下の腐敗し切った言論状況と比較して観る必要がある。
AK

AK