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蜘蛛の巣を払う女のywtのレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
3.0
「デヴィッドフィンチャーVSフェデアルバレス」

ミレニアムシリーズはオリジナル原作者スティーグ・ラーソン原作の三部作「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」「ミレニアム2 火と戯れる女」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」とスティーグ・ラーソンの急死後にダヴィド・ラーゲルクランがバトンを継いだ「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」「ミレニアム5 復讐の炎を吐く女」ミレニアム6 死すべき女」の計6作が発表されている。

スウェーデン版ではスティーグ・ラーソン原作の三部作は映画化されており、後にハリウッド版としてオリジナル三部の第一部に当たる「ドラゴン・タトゥーの女」をデヴィッドフィンチャー監督が映画化しており、続編(PART4)に当たる本作「蜘蛛の巣を払う女」はフェデアルバレス監督によって初の原作映画化となる。

ここで本作とどうしても比較してしまうのはフィンチャー版である。個人的な好みとしてはキャスティング、音楽、世界観(ノワール感)とフィンチャー版の方が好みであるが、フェデアルバレス監督が描く同シリーズもけして悪いものでなく、むしろフィンチャーのセンスが俺好み過ぎるだけであって、さすがと言っていいほど良質な作品となっている。007やMIシリーズが好きな人にとっては、フィンチャー版よりもアクションサスペンスになっているフェデアルバレス版(同作品ではないから、◯◯版と表記するのは厳密違うのだが……)の方が好きと言う人もいるのではなかろうか。

原作未読なのでなんとも言えないが、本作はドラゴンタトゥーの女よりも、リスベットとミカエルのバディ感はなく、特に本作でのミカエルの存在感は薄い。本題となるファイアーウォールの奪取に関しては、前述でも触れたがちょっと007やMIシリーズくらい問題規模がデカい話で、さすがにこの問題を女ハッカーと男ジャーナリストに手じゃ負えないだろうと思いながらも、クライマックスはもはやチートとも呼べるあのスナイパープレイが、細かいことを全て吹っ飛ばすくらいに痛快であった。そして、中ボスに関してはドントブリーズへのセルフオマージュの如く盲目にさせて車に撥ねられて奇跡の事故死のファインプレー。

珍しく長く筆を滑らせてしまったが、その理由は一つあるのだ。

デヴィッドフィンチャーVSフェデアルバレス

この構図は、本作ミレニアムシリーズの戦いだけでは終わらない。それは次回のフェデアルバレスの最新作がエイリアンシリーズの最新作だからだ。そう、言うまでもなくデヴィッドフィンチャーの黒歴史とも呼べる映画デビュー作はエイリアン3。まるでフィンチャーの足跡を辿るようなフィルモグラフィーを重ねていくフェデアルバレス。そういや本作の演出でもパニックルームみたいの2回くらい出てこなかった?(笑)

もうここまでくると、エイリアンの次の新作までもが楽しみになってきた。いっそのことデヴィッドフィンチャーVSフェデアルバレス対決三部作までこの戦いを続けて欲しいものだ。
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