Hiroki

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語のHirokiのレビュー・感想・評価

4.1
『THIS IS US』のクリエーターであるダン・フォーゲルマンの最新作。アメリカで評価が真っ二つに分かれていると聞いていて、みたいみたいとずっと思ってたんだけどやっと観れました。
そして賛否が分かれる理由がわかった気がする。

4つ、もしくは5つ、のチャプターに分かれている群像劇なんだけどまず作りが複雑。
そして偶然(あるいは運命)として巻き起こる要素が多い。
つまりめちゃくちゃ作り込まれている創作物感がとてもつよい。
もともと脚本家出身のダン・フォーゲルマンはその気があったけど…
そこに辟易してしまった人が多いのかな。

ただそれよりも私が今作で重要だと感じたのはアビー(オリヴィア・ワイルド)が大学の卒論のテーマとして語る“信頼できない語り手”の話。
“信頼できない語り手”はそもそも物語の語り手がすべて真実を話しているとは限らないというミステリーの常套句。
そしてどんな語り手であれ、知識や知覚には限界があるので語り手そのものが信頼できないとする説もある。

つまり今作においても語り手が話している事=物語のすべてが信頼できる真実とは限らない。
自分が経験した物語以外の物語において何が真実かなんてわからない。自分が実際に経験したことならたくさんの偶然が重なっても、運命とか奇跡だって信じるだろう。しかし実際には世の中のほとんどのことは経験することはできない。だから考えて想像するしかない。
そこで
「そんな偶然なんて起きるわけがない。運命も奇跡もない。」
と吐き捨てるのか?
「もしかしたらそんな偶然も起きるかもしれない。運命だって奇跡だってあるかもしれない。」
と信じるのか?
どちらを選択するのかで人生というものは決まるんじゃないか。
チャプター5で力強く語るエレーナ(ロレンツァ・イッツォ)からはそんな意志のようなものを感じた。
ダン・フォーゲルマンからのメッセージのように。

自分自身も少しそれを信じてみたいなっていう気持ちになったよ。

キャストはちょっと有名人使いすぎて満腹な感じはしたのでもう少し抑え気味でもよかったかも。
しかしアネット・ベニング、オリヴィア・クック、ライア・コスタ、ロレンツァ・イッツォと好きな女優がたくさん出てたので文句は言えない。

2020-32
Hiroki

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