りょう

アネットのりょうのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.0
 先日は、2021年のカンヌでパルムドールを受賞した「TITANE/チタン」を観たばかりですが、この作品は同年に監督賞を受賞しています。フランスからとんでもない作品ばかりが出品されて、多くの審査員は戸惑ったのか歓喜したのかわかりませんが、個人的にはどちらもぶっ飛びました。
 レオス・カラックス監督は、おそらく生涯ベストは不動であろう「汚れた血」を1986年に演出して、世間的には1991年の「ポンヌフの恋人」がピークで、すでに過去の映像作家になってしまった印象です。
 まさかこんな展開の物語とは予想もしていなかったので、“赤ちゃんが人形”という事前情報がなければ大混乱でついていけなかったと思います。物語や演出にはいろいろな解釈があるのでしょうが、個人的には純粋なミュージカルとして音楽に浸ることを優先しました。Sparksは聴いたりしないバンドですが、サントラを何回か聴いていたので、いい感じで映像になじんでいました。
 ヘンリーのスタンダップコメディのシーンが冗長と感じた以外は、ミュージカルの中心になっていた“We Love Each Other So Much”や“Aria”などの楽曲が素晴らしいので140分があっという間でした。個人的にはマリオン・コティヤールが全編に登場しないのが残念です。
 ラストシーンのアネットは突如として人間の女の子になりますが、子役のデビン・マクドウェルが可愛いし、ちゃんと歌ってるし、ここでエンディングというのは名残りおしかったです。レオス・カラックスの作品が苦手という映画ファンが多いようですが、アメリカを舞台とした英語劇(しかもファンタジー)だし、この作品はあまり深読みしないで観るのが正解だと思います。
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