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ハートストーンのhorryのレビュー・感想・評価

ハートストーン(2016年製作の映画)
4.0
アイスランドの漁村を舞台に、自分のセクシュアリティや暴力的な父親の存在に苦しむクリスティアンと、彼の想い人であるソールを中心に、思春期の少年少女と、彼らを取り巻く大人たちが描かれる。

みっともない顔をしたカサゴ、犬に襲われ怯えきって殺される羊と、ゲイであることを自分で受け入れられないクリスティアンが重ねられる。
彼にとって、田舎の漁村はすべてを監視される牢獄のようなもの。
クリスティアンが思いを寄せるソールも、たくさんの悩みを抱えている。村の息苦しさに苦しんでいるのはクリスティアンと同じだ。

セクシュアリティの悩み、なかなか成長しない身体の悩み、親の問題など、さまざまなレベルの問題が彼らを取り囲む。そして、彼らと親密になる女の子たちも、ヤリマンと後ろ指をさされたり、男の子と一晩をともにしても相手にされなかったり、なかなかスムーズにいかない日々を送っている。

誰もが誰もを知っている田舎の小さな漁村であるからこそ、こうした彼らの息苦しさは生まれる。
けれど、田舎という近すぎる人間関係の中で現れる、大切な繋がりが作中で丹念に追われる。
それは普遍的で、強く、人が人と生きていくことの根本にあるもの。

セクシュアルマイノリティを描きながら、大切なことを、普遍のものとして、大げさでなく描いた珠玉の一作だと思う。
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