磯野マグロ

蜂の巣の子供たちの磯野マグロのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.0
【国破れて山河と子等或り】21

下関駅で知り合った子どもたちを連れて、復員兵のおじさんが東へ東へと旅する。戦災で身寄りをなくした孤児と、もともと身寄りのない復員さんが目指すのは「みかへりの塔」。復員さんが育った感化院だ。
街を破壊し尽くした戦争の傷跡と、雄々しく瑞々しい山河。行く先々の人々の親切、子どもたちが経験する出会いと別れ。この映画を見てると、この映画の時代と現在と本当に貧しいのはどちらかと言えば、今だろ、と気付かされる。おれたち、70年かけて何やってきたんだっけ。
とはいえ全部真に受けちゃいけない、一筋縄ではいかない映画である。最初は超棒読みだった子どもたちの演技がだんだん上手くなってきて、いい顔で笑ったり、海が見たいという病気の仲間を背負って山に登ったりするとするとあれこれドキュメンタリーだったっけ?と泣きたくなるけど、実際はすっかりフィクション。孤児たちが河原で野球をしている子どもを見て、試合してやろうか、と近づくと相手に逃げられてしまう。その時の復員さんのセリフが「きっと気持ち悪かったんだよ。気持ち悪くない子供にならないといけないよ」というものすごさ。次作と合わせて見るとよくわかるけど、安易な感情移入は禁物。戦争は、清水宏は、甘くないです。
磯野マグロ

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