たむ

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉のたむのレビュー・感想・評価

4.3
『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の第二作のエクステンデッド版です。
ただでさえ長いのですが、そこに40分追加されているため、より濃密なドラマが展開していきます。
ディテールへのこだわりには相変わらず圧倒されます。

三部作の真ん中は、次に繋げるために非常に難しいながらもシリーズ最高傑作となる事も多くあります。
それらの作品が共通しているのが、グループを分けること。
『ゴッドファーザーPART2』は父ヴィトーの過去と息子マイケルの現在。
『スター・ウォーズ帝国の逆襲』はヨーダと修行するルークと帝国の反撃から逃げていくレイアとハン・ソロ。
『トイ・ストーリー2』は誘拐されたウッディと救出に向かうバズたち。
本作も前作で分断された旅の仲間達を3つのグループに分けて展開します。
指輪を捨てるフロドとサムはゴラムと出会い、道案内させる。
メリーとピピンはオークに拉致される。
アラゴルン達はその二人を救うべく走る。

そして本作のクライマックスは1時間近い砦での戦闘シーンです。
しかも雨まで降っているため『七人の侍』を思い出させますが、一万のウルクハイとの激突は映画史上に残る大戦闘シーンです。
私はこの第二作から『ロード・オブ・ザ・リング』派でアラゴルン推しになったわけですが、前作を遥かに凌ぐスケールとテーマ性、戦闘に向けてのアラゴルンのリーダーシップに感動したからです。
公開当時は一万のウルクハイと砦に残る少数のアラゴルン達は当時勃発したばかりのイラク戦争を予見したとまで言われました。
今観るとウクライナを予見したものに見えてきますし、それほど侵略の恐ろしさと侵略される側の恐怖と抵抗がリアルに描き出されます。
三部作通して、人間の世界に変わっていく中つ国の中で、人間の愚かさがテーマとなっていますが、「何故こうなってしまったのか」というセリフもあるように選択と行動の先にあるものに警戒すること。
普遍的に警戒しなければならない事が描き出されていくためファンタジーを超えて歴史劇のような感慨があります。
エクステンデッド版では回想やジョークが増えています。
より深いドラマが展開します。
『ロード・オブ・ザ・リング』の最高傑作は次の『王の帰還』に譲るかもしれませんが、本作あってのもの。
凄まじい映画です。

さて続編としてアカデミー賞作品賞ノミネートした珍しい例となりました。
他のノミネートが『シカゴ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『戦場のピアニスト』『めぐりあう時間たち』と傑作揃い。
イラク戦争真っ只中のアカデミー賞だったので、そういう時はよくありがちなのですが、現実逃避的な映画に流れます。
『シカゴ』が作品賞に輝きましたが、侵略の恐ろしさを描いた作品も高い評価を得ていましたね。
たむ

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