モカ

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還〈スペシャル・エクステンデッド・エディション〉のモカのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

スペシャル・エクステンデッド・エディション版追加シーンの個人的なメモ。

『王の帰還』の追加シーンはおよそ50分。
『二つの塔』は多数の短い映像が各所に散りばめられた印象だったが、今回はひとつひとつのシーンが割と長めに取られており、その圧倒的なボリューム感と共に物語の空白をしっかりと埋めてもらえる。

特にファラミアの登場シーンが多い。劇場公開版では影の薄かった彼だが、こちらではしっかりとした存在感を放っている。





⚠️以下、ネタバレ⚠️





『王の帰還』


【アイゼンガルド】

◾サルマンの最期
アイゼンガルドを訪れたセオデンとガンダルフ一行。オルサンクの塔にてサルマンとグリマの最期が明確に描かれている。



【ローハン】

◾呑み比べ
ローハン国の首都エドラスへ戻り、祝宴を上げるセオデン。ここでは宴会中にレゴラスとギムリがビールの呑み比べをしている。酔っ払ったギムリが何やらよくわからない事を口にする。

◾エオウィンの夢
深夜、一服しようと外に出ようとしたアラゴルン。眠っていたエオウィンが彼を引き止め、とても恐ろしい夢を見たと話す。

◾ゴンドールの衰微
エドラスからゴンドール国の首都ミナス・ティリスに到着したガンダルフとピピン。
ボロミアの訃報を聞き、我を失った執政デネソール公を見て、このままではゴンドールは滅びるとガンダルフが嘆く。次いでサウロンが放っている空の黒雲についても説明がなされる。
映画版では散々な扱いのデネソールだが、もともとは聡明な人物であり、若い頃は剣の腕でもアラゴルンと肩を並べている。ドゥネダインの血が強く発現しているため、彼もまた常人よりも長命。アラゴルンと同世代の88歳。



【ミナス・モルグル】

◾王が眠る十字路
モルドールへ向かう道中、かつてはゴンドールの一部だったミナス・モルグルの地を抜けるフロドとサム。ここで花冠を被った王の石像を見掛ける。

◾サムの警告
キリス・ウンゴルの階段(シェロブの巣へ続く階段)を登る際に、「もし旦那に何かあったら許さねえ」とサムがゴラムに警告する。



【ミナス・ティリス(決戦前)】

◾魔法使いの弟子
「なぜ指輪を持ち帰らなかった!」と、フロドたちを逃がしたファラミアにデネソール公が嫌悪の面持ちで問い詰める。
「私なら使いません」とファラミアは確固とした意見を述べている。

◾城塞の衛兵ペレグリン
ピピンとファラミアの会話。衛兵としてピピンが身にまとった鎧はファラミアの子供の頃の物であった。「学問よりも竜退治に憧れていた」と、少年時代を語る比較的なごやかな場面。



【ハロウ砦】

◾アラゴルン、死者の道を行く
ハロウ砦の奥、精霊山の峡谷。アラゴルンらが死者の道を行く道中が少し細かく描写されている。霊体のような霧(?)を息で吹き消そうするギムリの素振りがほほえましい。


─DVD版ではここからディスク2─


◾ウンバールの海賊船
亡霊を引き連れたアラゴルンが海賊船を乗っ取る。この時レゴラスが威嚇のために矢を放つが、ギムリのせいで矢がそれ、ひとりの海賊に当たってしまう。この海賊役は監督のピーター・ジャクソン本人である。

◾メリーの願い
メリーがエオウィンに友達を助けたいと切実な想いを語っている。友の身を案じるメリーの優しさが伺える。



【ミナス・ティリス(決戦~決戦後)】

◾アングマールの魔王
ガンダルフがナズグルの首領であるアングマールの魔王と対峙し、アングマールの魔王によってガンダルフの杖は粉々に砕かれてしまう。彼が途中から杖を持っていないのはそのため。
ガンダルフはもともとマイアであり、サウロンに近い強力な魔力を持っているが、その魔力同士がぶつかってしまうと中つ国そのものが崩壊してしまう恐れがあるため、イスタリとして送り込まれる際にその力を封じられている。ゆえに仲間を集めて中つ国を救うのが彼の使命であった。
強力な魔法を使わないのはそのせいであって、ナズグルに杖を砕かれたとは言え、決してガンダルフが弱いわけではない。

◾寮病院
戦で傷付いたエオウィンをアラゴルンが懇親的に介抱している。もともと“癒し手”として名高いアラゴルンだが、映像中ではあまり描かれる事がないため、なかなかに希少なシーンである。
また、この時エオウィンとファラミアが惹かれ合う場面が映される。劇場公開版ではいつの間にかエオウィンとファラミアが結ばれているが、その馴れ初めとなるシーンが垣間見られる。
この箇所ではセリフがなく、挿入歌を添えて足早に時が経過して行く。

◾アラゴルン、パランティアに挑む
サウロンの目をフロド達から遠ざけるため、アラゴルンがパランティア(サルマンが持っていた水晶玉)を使って敵の注意を引き付ける。

◾大将と白の姫君
エオウィンとファラミアが静かに寄り添い合う場面が描かれている。



【モルドール】

◾オーク軍に紛れて
滅びの山付近の荒野ゴルゴロスを行くフロドとサム。オークの鎧をまといオーク軍に紛れるが、正体がバレそうになり、喧嘩の芝居を打って逃げおおせる。

◾サウロンの口
モルドールの黒門前。全軍を引き連れたアラゴルンが最終決戦に挑む。「~だが今日ではない!」で有名なあの演説の直前に位置する。
劇場公開版では敵との交渉シーンがカットされているが、ここでモルドール軍の交渉役と言葉を交わすシーンがある。
「フロドは拷問にかけられ、苦しみながら死んだ」と、戦意を削ぐため一同を挑発するモルドール軍。皆が動揺する中、アラゴルンが敵の首をはね飛ばし、「フロドは生きている!死ぬものか!」と断言。戦の火蓋が切って落とされる。
カットされたシーンの中では個人的に最も好きな箇所。事の確信が得られないまま、それでも仲間のために命を掛けるアラゴルンらの勇姿が輝かしい。また、ここでの意思表示はこの後の「フロドのために」の場面と直結するため、カットするには惜しいようにも感じられる。

◾滅びの山
滅びの山、物語終盤。指輪を巡ってゴラムの言動が増えている。
この場面以降、特に新しい追加シーンは見当たらない。





『旅の仲間』約30分
『二つの塔』約45分
『王の帰還』約50分

計およそ125分、追加映像だけで2時間以上になる。

劇場での上映時間の都合上、苦しくもカットされたシーンの数々をこうして見直してみると、どのシーンも捨てがたいものばかりでした。削る場面を選択したピーター・ジャクソン監督も苦渋の決断だった事でしょう。
改めて、監督がトールキンの原作を愛する気持ちが本当によく伝わってきます。



(追加映像の各名称は製品版チャプター名より引用)
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