Kazusa

永遠のジャンゴのKazusaのレビュー・感想・評価

永遠のジャンゴ(2017年製作の映画)
3.7
試写会にて鑑賞。

舞台はナチス占領下のパリ。
ジャンゴ・ラインハルトはその圧倒的なギターテクニックで人々を魅了し、刺激的で熱狂的な音楽を奏でる実在のジャズミュージシャンである。

物語は彼のもとへ届くナチスによるドイツでの演奏依頼によって始まる。ジャズという音楽はナチスの忌避する非アーリア系芸術であり、幾分かの野生的な側面を含むものである。ナチスが奨励したのは古典主義的なもの(いわゆるクラシック)だ。彼らからみればジャズは野蛮で下品な音楽である。そのためナチスはジャンゴの演奏する曲目、曲調に対して形式的な制約を課す。

それならいっそジャンゴなんか呼ぶべきではないじゃないか、とツッコミたくなるがそれもご愛嬌。なぜならこの映画の重要な点とも言えるジャンゴの演奏シーンがとても良く作り込まれているためである。
普通の音楽映画ではされないようなギタリストの指板へのクローズアップなどには驚かされた。

しかしながら、この映画は単なる音楽映画ではない。ジャズオタクのためだけの映画ではない。

物語は一つの理念へ向かって進行する。
その理念とは、「被迫害民族の鎮魂」である。ジャンゴのギタリストとしての矜持はジプシー民族としての誇りに裏付けられたものであり、彼を生へと駆り立てたのも家族への愛であった。
この映画はそれが良く表現出来ている。

これがなぜ2017年に公開される必要があるのかは説明がなされるはずもないが、ジャズファンは勿論、この時代に興味のあるひとなら必見の映画であろうと言える。
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