Binchois

アイスと雨音のBinchoisのレビュー・感想・評価

アイスと雨音(2017年製作の映画)
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こういう虚実ないまぜ系は大好き。観客が観客でいられなくなる感覚が気持ちいいのかなあ。
映画の中で展開される演劇は、いかにも学生演劇っぽいつくり。抱えきれない想いを嘔吐したかのような台詞には、ほぼ共感できない。下手すりゃワードサラダみたいなもんだ。それでも、言葉になりきらない吐瀉物を投げつけるという若者たちの営為そのものには、心の底から同情する。自分が数年前まで学生演劇にどっぷりつかっていたので… 松居監督も慶応の劇団・創造工房出身だから、その辺の生々しさが自然と出ていた。
そして生演奏でのMOROHAのリリックは、演者たちも自覚しているであろう「虚勢」を代弁している。あまりにストレートな叫びがグサグサ刺さる。虚構と現実のバランスが巧いこと保たれてる。
で、これを映画で撮ってくれたことがとても嬉しい。過ぎ行き消え去る感情を繋ぎとめようとする思いに、尊敬の念を抱く。全編ノーカットによって演劇の臨場感が温存され、カメラワークによって空間が拡張する。お見事。僕がカメラになりたい。
どこまでが筋書き通りで、どこが偶発だったのかも気になる。撮影当日に下北沢が快晴だったら、映画のタイトルまで変わったのか?とか。
演劇/非演劇の転換にスクリーンサイズの切換えを使ったのはややズルい気もするが、緊張感がグッと高まったのは事実。
劇場で観られて本当に良かった。
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