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STOPのreitengoのレビュー・感想・評価

STOP(2017年製作の映画)
3.5
311を描いた作品が(直接的ではないが)シンゴジラがあるとはいえ、園子温作品や少しのドキュメンタリーくらいしか無く、日本発の製作物が少なすぎること、結果的に観客である我々が求めないことは残念なことだと思う。そんな中、韓国のドメジャー監督が本人の感情だけで本作を作り切ったことへ素直に感嘆し今回劇場へ足を運んだ。

原発被害の描写は震災時に監督が居なかったこともあるのか情報収集不足(爆発して都内に移動してから津波の情報を見る等)が目立ちノイズになる。

映画は夫婦の破綻を描いているが、これはお互いの意思疎通が成り立たない為に起こっていることであり、原発事故が無くともこの二人は破綻する。極端なトラブルにお互い力を束ね、共有・解決できない二人に明るい未来はなく当然ながら破綻しかない(最後の子どもに降りかかるトラブルへも適切な処理、準備ができずパニック状態になり成長が一切ない)。そう考えるとこの映画は案外、原発事故とは無関係なのでは?とすら思える。

冷静な行動と適切な情報収集をまったく行わない夫婦に感情移入はできない。原発の影響で極限状態だったからーという説明はあの時の東京では通じない。何故なら東京自体が極度のパニック状態だった。街は薄暗く、好好と電気で輝く都市ではなかった。皆マスクをし家路に急いだ。「ポポポーン」の音と「直ちに問題はありません」に街中が翻弄されていた。あの311直後の東京を全く把握できておらず残念。

謎の政府職員が堕胎の宣告を公園(結果的には道すがら?)に連れ出して行うなど稚拙な設定はノイズを通り越して製作の貧弱さに同情すら感じる(だったら勧告書でもドアから渡して夫婦が混乱して行く様を描いた方が良いーと素人ながら思う)。

「低予算」「監督がほぼ徹夜で作った」等の情報は不要な話で言い訳がましく興味が湧かない。端的に本作は残念ながら魅力に欠け説得力も薄い。素晴らしいカットも無い。ただ震災の恐怖から麻痺しつつある我々日本に冷や水をかけた本作は賞賛されるべきと私は思う。311から早6年。行ってよかったです。
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