人間のリアルな悪を描いた恐ろしい大傑作。
冒頭の絵による黒人差別問題の簡単な説明にはじまり、白人警官と黒人市民の緊張状態が爆発するまでの過程をテンポ良く静かに淡々と描いていく。
しかしこの作品は様相を変化させていく。
アルジェモーテルでの黒人拷問事件の場面で一気に観客を物語に引き込んで恐怖に陥れる。拷問場面ではリアルタイムに時が過ぎるが如くゆっくりと丁寧にドキュメンタリータッチに描いてみせるやり方が秀逸。
まるでその恐怖の事件現場に観客の自分も放り込まれたかのような感覚に陥り、緊張感と恐怖の連続に目が離せない。しかもこのシーンが40分強も続くのだから作品の登場人物たちと共に観客側も良い意味で疲弊させられる。
しかし我々はその後に続く闇の深さにただ絶望するしかないのである。
差別問題が広がってきている正に今、劇場で観るべき映画だと思う。
以下ネタバレ
細かい点を挙げるとラストに少し間延び感を感じる。
40分の拷問シーンの後はなるべく早めにラストまで持って行ったほうが切れ味鋭い悪辣な後味を持った映画に仕上がった気がする。