janome

デトロイトのjanomeのネタバレレビュー・内容・結末

デトロイト(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

非常に衝撃的な事実を、当事者の監修の元作っただけあり、見ただけで事件の場にいるような、トラウマになりかねないほどの心理的負担を体験できる重厚な造りとなっている。

事件のシーンを見ているときは、50分間ずっと動悸がするほど心拍数が上がって鑑賞していた。

ホラーレベルの恐怖という評価もあるが、ホラーなんかとは全く違う恐怖を感じさせられた。
それはやはりこれが「実話」であるからだ。

この事件はもはや戦時下で起きる現象とほとんど同じ構造にある。警官たちの心理は、ミリグラム博士が研究したホロコーストの構造やその他の犯罪心理における「暴力の正当化」に他ならない

そしてそれは無知からくるものであり、さらにその無知さから犯された過ちを認めず自己の正当性を何があっても曲げないという心理に陥る構造は、まさに争いが泥沼化する普遍的な構造だ。

その正当性への意固地な執着は、やがて自分を「普通」だと思っていた人々を捻じ曲げていく。
裁判の経緯はまさにそれそのものであり、こう言ったことだけではなく世界に氾濫している闘争の構造のようにも思う。

そして歪んだものたちのさらに恐ろしいことは、その歪みそのものに気づかず、無意識に、無自覚に更に歪みを深め、争いをさらに続けることになる。

これはデトロイトで起きた一つの事件の意味だけではなく、無知さを省みない、いわゆる社会学的な「大衆」の犯す罪を描いた映画だと、強く感じた。
つまり、加害者側の立場に誰がなってもおかしくないのだ。

個人的には世界の争いの根源はこの構造にあると日々感じている。

この事件や暴動について知らなかった自分を恥じると同時に、こう言った不幸を生まないよう自己の研鑽に努めたいと改めて思わせてくれる、私の生涯に残る一本となった。
janome

janome