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デトロイトのERIのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.1
この映画がトランプ政権の2018年につくられ公開されたことにとても大きな意味を持つ。映画は世の中の問題をとてもわかりやすく教えてくれる大切なツールだ。

真実を知るのはエネルギーがいるから、時間に余裕があって受け取る時が来たら是非観て欲しいな。わたしは、観てよかった。こんなにも理不尽なことがあっただなんて。こんな過去から私たちは何を学んで、どういう今にしていくのが良いのか。


1967年と言ったら歴史的にはつい最近の話だ。当時のデトロイトには40%の黒人が住んでいたけど警官の95%は白人だった。対立構造がずっとあって差別に対する我慢が限界を超え、デトロイトで起きた暴動事件。人種間の差別による恐れや不安がこの日、渦を巻いて膨れ上がった。

1967年7月23日。火炎瓶を投げられた店は燃えはじめ消火活動に手を焼いた。翌日ミシガン州警察が150ブロックの立入禁止区域を敷き行政の手が入り、街は銃を持った警官で溢れかえる。発砲は禁止されていたが街は機能しなくなり、生きていくために店から商品を奪う者も多くいた。

ある一人の白人警官は、街が破壊されていることに自分なりの見解があって、自分らが日頃から厳しくしていなかったからこんな暴動になったと持論を持っていた。発砲禁止令があるが構わず、店から商品を持ち出す黒人を背中から撃って、上司から指摘されていた。このことに納得がいっていない。当然のように差別的に黒人を見ていた。

一方、劇場では夢を持った黒人歌手グループが急な営業停止でステージに立てない夜だった。肩を落とす彼らは街の暴動に唖然とする。避難するように近くのアルジェ・モーテルで宿を取ることにした。

モーテルには4人の黒人が部屋を借りていて悪ふざけから競技用の銃を遠くで警備する警官たちに向けて発砲し、それが引き金となる。モーテルでなんの理由もなく尋問を始め3人の黒人が理由もなく警官に殺されたこと。裁判では無罪となり罪を問われなかったこと。こんな人種差別甚だしい事件がうやむやになったこと。わたしたちは知るべきなんだな。

差別をする白人警察をウィル・ポールターは本当に見ているこちらが感情移入しちゃうほどムカつくのだけど、勇気がある。こんな憎まれ役を演じきったことに。

あのモーテルの中にいる一人が自分だったらと考えてしまうよ。怖くて怖くてたまらなくて、震える。

映画を観終わって解決してない問題にモヤモヤと気分は晴れないのだけど、ラリーが教会で歌う聖歌に祈りを込めずにはいられなくて。どうかこんな理不尽なことが許されない世界になりますように。


監督はキャスリン・ビグロー。彼女の仕事がカッコよすぎる。
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