あでゆ

デトロイトのあでゆのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
4.3
1967年の夏、アメリカ・ミシガン州デトロイトで大規模な暴動が発生し、街が騒乱状態となる。2日目の夜、州兵集結地の付近で銃声が鳴り響いたという通報が入る。デトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元警備隊は、捜査のためにアルジェ・モーテルの別館に入る。数人の警官が、モーテルの宿泊客相手に捜査手順を無視した尋問を開始。宿泊客たちは自白を強要される。

じっくり、じっとりと、そして触れた途端に破裂してしまいそうな緊張の加減で描かれる、デトロイトという町の状況を示す第一幕。一触即発という言葉がこれほどまでに似合う状況も無いが、この時点では現実の映像と、それらと質感や絵作りを合わせた再現を用いて、あくまでもドキュメンタリータッチに描かれる。
ドキュメンタリーとは、あくまで第三者視点ということだ。いかに過酷な状況と言えども、家から見ている分には安心感があり、映像から絶望はしづらい。

ところがモーテルに近づくにつれて、これまた恐ろしいことに、気づかないうちに恐怖の第二幕へと観客は案内される。
第二幕はそれまでと比べて徹底的に主観的な映像だ。ジョン・ボイエガ演じる警備員や若者たちの肩越しの視点で、それまでは建物の外側から撮っていたカメラが、文字通りモーテルの内側に入っていくのだ。
正直警備員が事件の渦中に遠方からわざわざ踏み込んでいく様は違和感しか無いのだけれど、だからこそこの事件に加担してしまっている感覚が観客もより強くなる。
ここからは地獄の40分間だ。若手白人警官の恐ろしくも危なかしい演技に、被害者同様に恐れおののくしかない。

加担していると言えば、同席していた米軍の兵士もかなり象徴的だ。黒人に対して比較的優しい一面をのぞかせるが、決して事件や被害そのものを止めようとはしない傍観者の一員となっている。
とはいえ、彼を責めようとしても観客は責めることができないのだ。それは私たちも他ならぬ傍観者に過ぎないからだ。

第三幕、事件後の顛末もかなり救いがない。なんとか無罪っぽいので良かったけど、どんなに白人からのイメージを向上させようとしても、結局は彼の肌は黒いのだ。
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