「祈れ」
当時話題になっていたのがよくわかった。アカデミー賞ノミネートこそならなかったものの、作品のインパクトは一級品。
同じような作品だと『ブラッククランズマン』が挙げられると思うんだけど、上記は脚本もしっかりしていて”観衆に観せる作り”だったと思うんですよ。
一方こちらは混沌。8割がアルジェ・モーテル事件の夜を描いている。それだけに頭から「あの夜」がこびり付いて離れない。
救いもなく、ただ怒りが湧き上がる。
最後の祈るような目線のカット、どうしてあの夜を過ごした彼があんな顔をしなくちゃいけないんだろう。
そして私の中でMVPはレイシストの白人警官役ウィル・ポーター氏。
彼の演技幅の広さには感心するばかり。普段あんなにいい人の彼が、ただただ憎くて仕方がなかった。
見ているときどうしてもキャストさんの地の性格を加味してしまいがちなんだけど、全くそれが起きなくて。ポーター氏の演技を見て感じたのは純粋な怒りなんです。
当時のインタビューで「この役を受けることはある種の責任だ(意訳)」的なこと言ってたと思うんだけど、こんな難しくて精神すり減らしそうな役を引き受けてくれたポーター氏には感謝しかない。ポーター氏以外のフィリップは考えられないな。