けーはち

ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密のけーはちのレビュー・感想・評価

3.9
原題は『~the Wonder Women』と複数形なのがミソ。

『ワンダーウーマン』コミック原作者であり、1920年代アメリカで一夫多妻の家庭を持ち、多人数SMやコスプレSEXを導入し愛の多様性を追求したにわかに実話とは信じがたい男の伝記秘話。WW映画公開時から観たいとは思っていたが本作は日本劇場公開なしで後回しにしてしまったのだった。

’28年、ウソ発見器の研究をするハーバード大学心理学教授マーストン(ルーク・エヴァンス)は、2人の女性との間にポリアモリー的三角夫婦関係を成立させてしまう。3人の仲は公然となり大学を追放。ウソ発見器の特許も取っておらず、露頭に迷った彼らは、心理学の理論(とSMや女性崇拝にも似た性癖)を導入して『スーパーマン』で脚光を浴びていたDCコミックに原作を書き始める。それが『ワンダーウーマン』である。

露出度の高い衣装、縛り、縛られるSM的な描写の多いWWは表現規制の手にかけられ、そして彼らの一夫多妻家庭もご近所づきあいでは異様な鼻つまみ者になり、子どもたちのために一旦別れを選択する。ヒーローには隠すべきシークレット・アイデンティティがつきものだが、彼ら自身もそうであり、またWWの真実を告白させる縄もまたウソ発見器を暗示しているし、真実のために戦うワンダーウーマンは正しく彼ら彼女ら自身なのだ。

女好きすぎるマーストン教授をゲイを公言しているルクエヴァに演じさせた辺りもかなり意図を感じるのだが、おそらくは彼の問いかける愛の多様性とフェミニズム、表現の自由は現代にも通じるだろう。多対多の性愛が自由にできると、世の中の風通しがよくなるかもね(病気にはご注意?)。