桑原

ザ・ヴォイド 変異世界の桑原のレビュー・感想・評価

ザ・ヴォイド 変異世界(2016年製作の映画)
2.9
映画としてはたいそうつまらない作品なのだが、 
登場するクリーチャーは実物で、よく出来たCGよりも迫力がある。
わざわざ実物を作り、動かし、血みどろになるまで破壊する。
CGが発達する前の時代におけるボディホラー的な魂や愛情を感じ、純粋に好感が持てる。

また、カルト教団のビジュアルも、シンプルながら非常にクールな仕上がりになっており、限られた予算の中で不可解な雰囲気を効果的に演出していることも素晴らしい。

中盤から見られる、複数のシチュエーションがぶつ切り的に散りばめられるのは、受け手の理解をやや困難にするきらいがあるものの、おそらく元ネタであろう、クトゥルフ神話における「時空の概念に囚われない存在達」という、コズミックホラー的精神性を見出せなくもない。
(もし意図したものでないなら、まあそれはそれで...)

ストーリーが分かりにくい
という意見が散見されるが、黒幕でさえもその信仰対象の全てを理解していない(であろう)。そういった底の知れなさ、不可解さ、不条理さ、因果関係の超越。それこそがコズミックホラー的恐怖だと思うので、きっちり説明されても興が覚める気もする。

とはいえ、それ自体が面白さに繋がっているワケではないので、やはりこういうジャンルをエンタメに落とし込むのは難しいのだろう。

結果として面白い作品ではないのだが、「=クソ映画」と一蹴してしまうには、情熱と愛情をひしひしと感じさせる、良くも悪くもインディーズスピリッツに溢れた作品だった。

例え面白くなくとも、こういう作品は存在すべきだと、俺は思う。
桑原

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